小指も抱けない彼女
「……!」
体が硬直したのは、枕元で『とん』と物が落ちた音を聞いたから。
ベッドの宮から枕元もとまで飛べない距離じゃない。彼女のすすり泣きが後頭部から聞こえたことで確信した。
「ひじ、り……」
ようやっと呼べた名前は、渇いた喉から。叫んだつもりはないのに、心で叫べば知らずに水分を失うらしい。
「ご、ごめ、んっ」
謝る彼女の姿を見ようにも、下手に寝返りは打てない。彼女を潰してしまうと、体を石にする。
「こっち、来れる?」
首筋にむずがゆさ。髪をロープ代わりに俺の首を登山する彼女が、ようやっと俺の眼前にたどり着く。
「やまり、く、ひぐっ、ごめ……!」
堰を切った泣き方は、我慢の限界を表している。