小指も抱けない彼女

「すみません、黙っていようと思ったのですが、少し、喧嘩をしま……して。お義母さんにお聞かせするにはみっともないと、多分、彼女も遠慮したのではないか、と……」

言葉の引き出しを総動員しても、選び抜く頭が壊れてしまえば、こんな嘘にしか繋がらない。


ありきたりな、されども、よく使われるからこそ納得し、まさか娘が小さくなっているとは露とも思っていない母は、笑って信じる。

『あらー!あなたたちでも喧嘩することがあるのねっ。あの子がワガママでも言ったかしらー?ごめんなさいねー』

「いえ、そんな」

どうにも、電話向こうの人は、俺をよくできた真人間認定をしているらしい。

食事の際のマナーだとか、聖をいかに大切にするかとした話で認められたらしい。

聖がワガママだなんてことはないが、それすらも遠慮と受け取った相手の悩みは自己完結。

喧嘩するほど何とやらのお決まりの口上をし、下らない話で通話は終わる。

「……」

頭痛と共に、耳鳴りが酷い。
だというのに、頭から離れず、耳に残る原因。

『子供みたく泣いて』

「そんなに、恋しかったのか」

瓦解の音は止む。
それはつまりーー


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