小指も抱けない彼女

(七)

予想の範疇だった。されど、考えないようにしていた。

最初から彼女は母親を恋しがっていたのに、俺がいるから寂しくなんかないーー“寂しい訳がない”と思っていたのに。

ボタン一つで連絡出来るこの時代で、いったいどれだけの人物が、11桁の番号を覚えているのだろうか。少なくとも、二人はいる。

何かの間違いで消えても良いよう、彼女の連絡先を熟知している俺と。母親の携帯番号を覚えている彼女。

彼女は果たして、口頭で俺の番号を言えるだろうか?

彼女の母と俺では別次元の問題だ。この事実に苛つきを覚えるのがおかしい。片や、彼女が産まれてから今まで。片や、一年ほどの関係。彼女の本音が出やすく、かつ、一緒にいて落ち着くのはどちらかなど、言うまでもない。

だから、おかしいんだ。
おかしいのは、俺だ。

腸が煮えくり返ることなどない。けれども、腹部がねじ曲がったような気持ちの悪さが残り続ける。

俺があげたスマホで、真っ先に連絡したのは母。俺の番号しか登録していないスマホで、使い慣れないくせにわざわざ11桁の番号を打った。


子供のように泣きじゃくるほどーー母に胸の内を吐露して、俺には何も言ってくれない、無理して笑うのに、何も何も言ってはーー!

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