小指も抱けない彼女
「おいで、聖」
手を伸ばす。躊躇いがちな花は、それでも手の平に乗ってくれた。
こんな俺でも、彼女は信頼してくれて、身を預けてくれるのか。
俺は、最悪な人間と知っているはずなのに。
「夜鞠、くん?」
彼女を床に下ろす。
ベッドに腰掛け、足先で動く彼女を見た。
「夜鞠くん、夜鞠、くん……」
不安げに、俺の足に上り、ズボンの裾を掴む彼女。挑む瞳も潤む、怯えた顔。初めてだ、サファイアよりも綺麗に思える。
「夜鞠くん、“ギュギュが”」
裾のシワが深くなる。部屋の隅から、中央にまで、ギュギュが移動して来たからだろう。
ああ、本当に。
「“大変だね”」
「……っ」
顔を青くした彼女が、裾から上へ上ろうと悪戦苦闘している。けれども、1㎝も上らずしてずるずると落ちる始末。
それを何度続けただろうか。その間に、ギュギュはどれほど近づいて来たかな。