小指も抱けない彼女
何で、俺は彼女を泣かせることばかりしているんだーー
失いたくない恐怖、大切な人を守りたい使命感、それらが空回りして、彼女の想いをないがしろにした。勝手に俺の想いを押し付けた。
聖はこんなにも、俺を愛してくれているのに。
「聖、ごめん……」
こんな謝罪しか言えない己を呪う。一瞬、喉元に刃を突き刺す想像をしたが、揉み消した。彼女はそんなこと望んでいないと、別の行動に変える。
「元に、戻ろう」
手を伸ばせば、指を握ってくれる小さな彼女へ。
小指すらも抱けずに、悔しいと泣く愛する人へ。
身勝手なことをした俺を許してくれる、大切な恋人へ。
「大丈夫。きっと、元に戻れるから」
「う、ん。そしたら、いっぱい、ぎゅうってするね」
何万回言っても足りない愛情は、刹那をもって事足りた。
表現せずとも、君を想えるだけで満足だよ。