小指も抱けない彼女

「溜め息ついたら、幸せ逃げちゃうよー」

ベッドに背もたれる俺の肩に聖が飛び乗った。
落ちないように手を添え、愛くるしい目を見る。

「君は、逃げないだろ?」

「……はっ、そういう意味か!」

俺の言いたいことに気づき、もーっ、と耳たぶを引っ張る彼女だった。

「夜鞠くん、次の策は?」

「頭フル回転してるところ」

「夜鞠くんに分からないなら、誰にも分からないね」

「買いかぶり過ぎだ。ーー絶対、元に戻すから」

ない知恵絞って出ないならば、知恵を集めるしかない。

「聖、一つ案が出来た」

「なになに」

「外国にでも行って、調べてくる」

「壮大な話になりそー」

「だから、君はここに置いていく」

「遠恋の話になりそー」

ふざけた口振りには、本気だよ?と返す。

「外国なら、ネットも何も繋がらない閉鎖的な場所があって、聖みたいな奴がいても直接赴かなきゃ分からないようになっている可能性もある。ただし、そんな危険な場所に聖を連れてはいけない。だから君は、お義母さんと一緒に、俺の帰りを待ってて」

「危ないめにあって欲しくないので、却下です」

髪を一本抜かれた。
抜いた拍子に落ちそうになる彼女を、手のひらに乗せる。

「もっと別のこと考えてよ。それでも強情に行くなら、こっそり夜鞠くんの旅行バックに忍び込むからね」

いじいじと抜いた髪の毛を結ぶ聖には、とことん敵わないなと実感する。

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