小指も抱けない彼女
(九)
低温注意報が出ていた日だった。この上なく寒いのは当たり前なのに、何故だかとても温かい。
天国とはきっとこんな場所なのかさえ思ってしまう至福の一時。
「夜鞠くんっ、夜鞠くんっ」
目覚まし代わりに彼女の声がしたものだから、余計に眠くなった。
前はラジオ体操が出来るほど清々しく起きられるかと思ったが、撤回。彼女とまた一眠りしたくなる。
「起きてー、私の服、どこにしまったの!?」
「ふく、なら……昨日、セーター編んだのが」
そこに、と目を瞑りながらも、頭上を指差す。
「寝ぼけてないで起きてー、現実見てー!彼女の非常事態なんだよっ」
ガクガクと俺の体を揺さぶる彼女。彼女の非常事態なら、すぐに目覚めなければならないが。
「ーー!」
寝ぼけから一気に覚醒する。
俺の体を揺さぶるなんて。
「聖っ」
「やっぱり起きちゃダメー!」
とかいう理不尽すらも許せる元に戻っても可愛らしい彼女を見た早朝だった。