恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「お~つ~か~れ~さ~ま~」
何度目の乾杯だろう。
眠くなるかと思いきや、飲めば飲むほど目が冴えて来るような気がする。
私はヘラヘラ笑いながら、日本酒を飲んでいる。
ビールよりお腹一杯にならないし、この酔い加減が堪らない。
「玉井さん、大丈夫っすか? いつもよりハイペースだし」
浅沼君が心配してくれるのは有難いけれど、そんな顔されてもね。
「浅沼君、心配性のお母さんみたいじゃん」
「だって、いつもの玉井さんじゃないから」
だから心配なんですよ、なんて言う浅沼君は困ったように眉を下げた。
「あれっ、高松さんは?」
「随分前に、帰ったじゃないですか!!」
あれ、そうだっけ?
トイレじゃなかったっけ?
「そうかぁ」
ヘラッと笑って盃に口を付けると、浅沼君の大きな溜息が聞こえた。
「玉井さんがこんなになるまで飲ませたなんて、笹山先輩に知られたら俺、殺される」
「……なんで笹山が出てくんのよ。関係ないでしょ」
私はジロッと浅沼君を睨んだ、つもり。
体がフワフワし過ぎて、遠近感が掴めない。
「俺、今日頼まれたんすよ。玉井さんが、あんまり飲み過ぎないように見てやってって。笹山先輩少し心配してたし」
「フンッ。心配なんて要らないっつーの」
馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい。
私が笹山の所為で、こんな風になると予想したってこと?
……そんなに自惚れてるのか、笹山は。
「さぁ、飲もうっ!!浅沼君、かんぱ~い」
無理やり浅沼君の生ビールのジョッキに、自分の盃を衝突させた。