恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
―――

見慣れた天井を、ぼんやりと見上げる。

オレンジ色の常夜灯が付いていない所為か、やけに暗い。

うっ。

体を起した途端に感じる、この不快感。

リ、リバースしそう。

私は、グワングワンする頭とやたらと重い体を、どうにか奮い立たせて、トイレに向かった。


「うぐっ」

この間隅々まで綺麗にした便器と、こんなに仲良くなるなんて。

涙目になりながらも、出せるものを出したから少しはスッキリしたかもしれない。

頭はクラクラしたままだけど。


……どうやって、帰って来たんだろう?

終盤の記憶が全く無い。

記憶が飛ぶって初めて……。

浅沼君に相当な迷惑をかけたんだろう、と猛省するも……便器の前では止めよう。

取り敢えず、水飲もう。

私は頭を押さえながら、ゆっくりとキッチンへ向かった。


冷蔵庫の灯りを頼りに、ミネラルウォーターをマグカップに注ぐ。

……テレビもつけっぱなし。

水を飲みながら居間のテレビを見ると、深夜放送のお笑い番組らしく、芸人のけたたましい笑い声が、小さく聞こえてくる。

暗い部屋に、テレビのチラチラした画像の光が影を揺らす。

モスグリーンのソファに腰掛けようと重い足を引きずり歩き出した時、何か違和感を感じた。

さっきまで気が付かなかった人の気配。

もしかして、浅沼君に連れて帰ってもらったんだろうか?

それにしたって、何でこんなところで寝ているの?

私のお気に入りのソファとテーブルの間に寝ている、その人影を覗いた。

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