恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
私はその人を見て、息をのんだ。
「さ、笹山……」
何で、ここにいるの?
昨日とっとと帰った筈のこの人が、何で私の部屋で気持ち良さそうに寝ているの。
テーブルの上を見ると、ビールの缶や食べかけのポテトチップ、何処から引っ張り出したのか灰皿まで置いてある。
私は床に座り込み、手元のカップをテーブルに置いた。
そして笹山の綺麗な寝顔を、マジマジと見詰める。
良く分らないけど、笹山がいる。
こんなに近くにいる。
そっと、笹山の柔らかそうな髪に触れると、やっぱり心臓が苦しくなった気がして自分の胸を押さえた。
「……俺の上に吐くんじゃねぇぞ」
笹山の片目が開いたのを見た瞬間、私の体は反射的に跳ねてしまい、テーブルの角にしたたか背中をぶつけた。
「うっ、痛っ!!」
背中は痛いわ、振動で頭は揺れるわで、私は片手でこめかみを押さえる。
そんな私を苦々しい表情で見ていた笹山は、ゆっくり体を起して胡坐をかいた。
「お前って仕事は出来るのに、何でそんなに抜けてんのかね」
「……笹山がここにいるのが理解出来ない」
「お前、どの位覚えてる?」
「浅沼君と飲んでたところ……かな」