恋のためらい~S系同期に誘惑されて~
「タマ、やっぱ馬鹿だろ。……お前に電話しても繋がらねぇから浅沼に連絡したら、泥酔してるって泣かれたんだよ。本当は俺の家に連れて帰ろうかと思ったけど、自分の家に帰るって暴れ出しやがるし。今にも吐きそうな顔色してたから部屋まで着いてきたのに、1人で寝室にフラフラ歩いていって爆睡し始めたんだぜ、お前。ホント最悪」

「だって」

「俺、飲み過ぎんなって言ったよな?」

「だって」

「だって、何だよ。お前みたいに無防備な奴、目なんか離せねぇだろうが」

笹山は面白く無さそうに笑った。

「お前がどう思ってんのか知らねぇけど、俺も結構必死なんだけどな」

頼れる灯りはテレビ画面だけのこの部屋で、笹山とこんな話しをしているなんて、現実味が薄すぎる。

なんか……嘘みたい。

「嘘って何だよ」

心で思ってる筈の言葉が口をついて出ていたらしく、笹山の眼光が私を射る。

「……本当っぽくないから。ここに笹山がいるの」

そう言った瞬間、笹山の片手が私の頬を押さえた。

「現実感出してやるから、嫌なら言えよ」

私達はいつの間にか、至近距離まで近づいていた。

この間とはまるで違う笹山の唇の優しい感触に、私の頭の中は沸騰しそうになる。

ゆっくり触れるだけのキスが終わると、私の背中に笹山の長い腕が回された。

――私は今、笹山の腕の中にいる。

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