シュガー*シガレット*シークレット
「……タバコ、ね。おまえここ、学校だってことわかってる?」

「………」



──まずい人に、見つかった。

目の前で先ほど落としたタバコをつまみながら呆れたような低い声で話し掛ける人物に対し、私は顔をうつむけたまま。

そこで初めて、その人は私の正体に気付いたように顔を覗き込んできた。



「っておまえ、2Bの穂積か」



そう言って驚いたように目を見開いたその人物は、私のクラスの数学も担当してる、南 敦広先生。

南先生はまだ若く、顔もどっかの俳優みたいにかっこいい。

そしてそんな見た目からは想像できないけど口が悪く、いつも歯に衣着せぬ言い方で。逆にそれが生徒たちにウケて、男女関わらず人気がある先生。

……私の、苦手なタイプの先生。



「こんなとこで堂々と授業さぼって、あまつタバコか。品行方正な優等生が、なんでまた……」

「……南先生は、」



目の前の人物──南先生の言葉をさえぎって、私はようやく顔をあげた。

体の両脇で、こぶしをぎゅっと握りしめて。震えるくちびるを開く。



「先生は、私のこと、優等生って思いますか」

「は? そりゃあ……おまえ、こないだのテストも学年1位だったろ。それにバスケ部のエースで、学級委員で人望も厚いし友達多いって、俺はおまえの担任の清水先生に聞いたけど」



訝しげに眉を寄せながらもそう答えた南先生に、私は小さくため息をつく。


“優等生”、か。


……そんなの。
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