シュガー*シガレット*シークレット
「……そんなの、好きでなったわけじゃない」

「ほづみ、」



無意識に、声が震える。

目頭が熱くなってきて、泣きそうになるのを必死に堪えながら、言葉を続けた。



「勉強をがんばるのは、親がいい成績取れってうるさいから。バスケ部のエースって言っても、チームメイトたちから妬まれて陰で悪口言われてることも知ってる。学級委員だって自分からなったんじゃなくて、ホームルームでクラスメイトたちに推薦されたから。それもどうせみんな、手頃な私に押しつけただけだし」

「………」

「友達だって、広く浅く付き合ってるだけだから、ほんとの親友なんていない。……もう、息苦しいの私。期待とか、羨望とか、そんなのいらない。薄っぺらい言葉とか、そんなのほしくない」



気を抜けば滲みそうになる涙をごまかすように、一気にまくしたてる。


──最初は私も、必死にがんばった。

親が期待する私。先生が期待する私。クラスメイトが期待する私。

いつからだったろう、その期待が、息苦しく感じ始めたのは。

いつからだったろう、世界が、灰色にくすんで見え始めたのは。

頼まれたことは、笑顔で引き受けなければいけない。それが“私”だから。

自分は、こうでなければいけない。だから、これはしちゃいけない。そんな基準で、行動を選ぶようになったのは。
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