私のお人形
パパに促されるまま、包みをあける。


が、途中でその手が止まってしまった。




パパからのプレゼントは――、


――金髪の巻き毛のお人形だった。


声が出せない。

きっとママも。



――だってセーラと瓜二つだもの。



「これね、背中に電池を入れるとね、かんたんなおしゃべりもできるんだってよ」


何も知らないパパは無邪気に笑いかける。


私はママと顔を見合わせたきり言葉を詰まらせてしまっていた。




そして――。




「ハロー」



巻き毛の人形が確かにそう言った。


まさか…そんなことあるわけない!


でも、でも、聞き間違えることもありえない。


だって、チャックの声だよ。


忘れられるわけない。




チャックはガスコンロの上で焼けただれて死んだのよ。



チャックはもうこの世にいないわ。



だから…。





――え…?



今、パパが私の顔を見てにやりと笑った。


「パパも子どもの頃人形をもらったことがあってね」


――そんな、まさか…。


パパは無気味な笑みを口元に浮かべたまま続ける。


「ユリ、なんでお人形の言うとおりにしないんだ。悪い子だなあ」







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