私のお人形
「待て、ユリ!!」

振り返ると、セーラがものすごい勢いでこちらに向かって走っていた。

私との差はみるみるうちに縮まっていく。

セーラの必死な形相がどんどんはっきり見えてくる。



やだ、助けて。

なんとか逃げ切らないと…。



そう思って、前方を向きさらに加速しようとしたそのとき!




ププーッ、ププーッ!!!



耳を突き刺すようなクラクションの音。

しかも、真っ白なライトに照らされ、何がなんだかよく見えない。



見えたのは、車を運転している人形の顔。

無表情で氷のような、冷たい表情。



一台の車が歩道に向かって突っ込んできた。






それっきり、何も憶えていない。

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