異世界で家庭菜園やってみた
「これが、来月、帝国への使節団に持って行って貰う織物だよ」

「使節団?」

工場の一画にある小部屋に来ると、ネルが完成した絨毯くらいの大きさの織物を広げて見せてくれた。

「各国の首脳級が帝国に集まって会談を開くんだ。うちの国からは当然国王が行くから、それに見合ったお土産も持参しなければならないから」

ウリエルが説明してくれ、悠里もなるほどと頷いた。

「ウリエルさんも、行っちゃうんですか?」

「いや。俺は行かないよ。今回は親父やその取り巻きだけ」

「そう……」

心底ほっとしたのがばれたのか、ウリエルがふっと笑った。

「あれ?俺がいたら嬉しいの?」

「え。だって。野菜作らないといけないし」

「ええ!?それだけ?」

「何を期待してるんですか!何を!」

「あら、あら。そうやってると、昔のコウメさまと大公さまを見ているみたいですよ」

コロコロと笑うネルの言葉に、悠里の顔が強張った。

「わたしは、コウメさまとは違います!」

言い放って、部屋を出て行ってしまった悠里。

あとには、大きな溜め息をつくウリエルと、思案気に小首を傾げるネルが残された。




悠里は一人でずんずん歩いて行きながら、ぶつぶつ呟いている。

「わたしは、コウメさまとは違うよ。例え、野菜作りが成功しても、ここに留まるなんて考えられない。だって、わたしの家族は、日本にいるんだから……」

そう言いながらも、心が半分に千切れてしまいそうだった。

元の世界に戻りたい気持ちと、ここに居たい気持ち。

それらがせめぎ合い、悠里を苦しめている……。



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