キミさえいれば
「だからN大はおろか、大学なんて行けないかも……」


えーん、恥ずかしいよう。


「え、じゃあなんであの高校に受かったわけ?」


うっ、そうだよね。

 
そう思うよね?


「私ね、副教科の成績が良かったの。

美術も音楽も技術家庭科もオール10で。

あ、体育だけは8だったんだけどね」


「すごいな。美術とか音楽とか得意なんだ」


「う、うん。まぁ……」


だって、そんなに勉強しなくていいんだもの。


「勉強が苦手なら、俺に言ってくれたらいいのに。

テストに出そうなところ教えてあげるし。

去年のテスト、全部あげるのに」


「えっ、ホントに?」


「俺と付き合ってんだから、それくらいの特典があってもいいだろ?」


そう言ってウィンクする先輩。


やだー。


そんなことなら早く言えば良かったなあ。


恥ずかしくて言えなかったんだよねぇ。


平均点さえ採れないこの頭の悪さを……。


「でもま、俺は女の子はそれくらいの方が可愛くて好きだよ」


「先輩……」


先輩は優しいな……。


大好き。


しばらくすると、先輩の道場がある方面に向かうバスがやって来たから、先輩はバスに乗り込んだ。


私達はお互いの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。
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