キミさえいれば
「私は何を言われてもいい。

でも、たもっちゃんの将来を潰すようなことはやめてっ。

お願い。

お願いだから……っ」


勝手に、涙がぽろぽろと流れてしまう。


泣くのはズルイってわかってるけど、どうしても止まらない。


「だから、別れろって。

そしたら誰にも言わねぇから」


別れる……?


先輩と私が……?


そんなの……。


そんなの無理だよ……。


「ごめ、ん。

私、それだけは出来ない……」


「凛……」


「お願い。

それ以外のことなら私、何でもするから。

だから、別れるのだけは許して……」


「お前、そんなに……?」


私は膝がガクガクして、その場にしゃがみこんでしまった。


先輩と別れるのはイヤ。


絶対にイヤなの……。


ハヤト君はハッと息を吐くと、急に階段から立ち上がった。


「クソッ!」


そう言ったかと思うと、ダンッと非常扉を強く蹴った。


その大きな音に、私の肩がビクンと跳ね上がった。


「チクショー! 保の野郎。

なんなんだよ!

昔から俺のジャマばっかりして、ムカつくんだよ!」


ハヤト君は、ひどくイライラしている様子だ。


「お前、何でもするって言ったな?」


「え……?」


「俺の条件を飲むなら、保と別れなくてもいいし、お前らが兄妹だって事、黙っててやってもいいぞ」


「本当に……?」


「放課後、俺のクラスへ来い」


ハヤト君の真剣な眼差しに戸惑いつつ、私はコクンと頷いた。
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