キミさえいれば
「アイツ、昔とすっかり雰囲気が変わってて、最初はわかんなかったよ。

でも、すぐに気づいた。

アイツの左耳の前にある小さな傷。

あれ、俺がつけたから」


思わずぎゅっと、スカートを握りしめた。


そうだ。


昔からたもっちゃんとハヤト君はケンカばかりしていた。


そのほとんどは、私が原因だったけど……。


「もう別れろ」


「え……?」


「兄貴と付き合ったって、ロクな事ねぇぞ」


「ハヤト君、私……」


「何だよ。

兄貴が好きだとでも言うのか?

それが何だかわかってんのか?

近親……」


「やめて! 言わないで!」


そんなこと……言わないで……。


「別れないならバラすぞ」


「ハヤト君?」


「バレたらどうなるだろうな?」


ハヤト君の言葉に、ドクンドクンと心臓が早鐘を打ち始める。


あまりに強く打つから、視界までドクドクと揺れた。


「アイツ、指定校推薦もらってんだろ?

もう面接も終わってるとか。

だけど、妹とデキてるって高校と大学に知れ渡ったらどうなるかな」


やめて……。


もう、やめて……。


「推薦も取り消されるし、アイツの将来どうなるのかね」


ハヤト君の目がずっと鋭くて怖い。


昔からそうだった。


私はこの冷たい瞳が苦手だった。
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