キミさえいれば
母さんは落としたバッグを拾うと、俺の方へつかつかと歩いて来た。


母さんは息が乱れ、肩が上下し、身体中が震えている。


次の瞬間、母さんの右手が俺の頬をバシッと強く殴った。


「栄子!」


母さんの行動を見た父さんが大声で叫んだ。


「保、あなたって子は昔から!

どうして?

どうしてなの!」


俺はぶたれた方向に向いたまま、顔を戻す事が出来なかった。


「栄子。

保と凛は、兄妹だと知らずに好きになったんだ……」


父さんが苦しそうに言葉を発する。


「でも、途中で兄だとわかったんでしょう?

記憶も戻ったんでしょう?

だったら、その時点でやめないとダメじゃない!

あなたは凛より年上なのよ?

あなたが身を引くべきだったんじゃないの?」


母さんの言う通りだ。


兄妹とわかった時点で、やめなければいけなかった。


だけど。


だけど、俺は……。
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