キミさえいれば
その日の夜、母さんは一旦自宅へ戻り、私は翌朝の診察で退院の日が決まった。


今日は先輩が学校帰りにお見舞いに来てくれる。


赤ちゃんのこと、真剣に話し合わなくちゃ……。


先輩のお母さんがああおっしゃってくださったけど、母さんがその条件を呑むとは到底思えない。


だって別れた夫の今の奥さんにお世話になるって、かなり奇妙なことなんじゃないかな。


私はお父さんの娘ではあるけど、黒崎さんは全くの他人なんだし……。


そんなことを思いながら、私はお腹にそっと両手を置いた。


あなたは男の子?


それとも女の子?


どんな顔をしているのかな。


先輩に似ているのかな。


どんな声で泣くんだろう。


可愛い声かな。


何に興味を持つんだろう。


どんなふうに成長していくんだろう。


見たいな。


見たいけど、でも……。


わたし一人の意志じゃどうしようも出来ないし……。


はぁとため息をついたその直後、コンコンと病室のドアがノックされた。
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