キミさえいれば
ドアを開けて顔を出したのは、昨日と同様、かっこいいスーツに身を包んだ黒崎さんだった。


「凛ちゃん、こんにちは」


「こ、こんにちは」


なぜか無意識に背筋が伸びてしまう私。


「外回りのついでに来たの。

体調はどう?」


そう言いながら黒崎さんは、ベッド横の椅子に腰を下ろした。


「はい、もう大丈夫です。

今朝の診察で、明後日には退院することになりました」


「あら、そうなの。

それは良かったわね」


退院した後、私はどうしたらいいのかな?


妊娠したまま、高校に通うのかな。


なんだか不安で押し潰されてしまいそう……。


「あの、黒崎さん」


「なにかしら?」


「昨日、おっしゃってくださったことなんですけど。

あの……。

なぜ応援してくださるんですか?

普通だったら、赤ちゃんを諦めるように言うはずなのに……」


どうして援助してまで、赤ちゃんを産ませてくれようとしているのか。


私はそれが知りたくて仕方がなかった。


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