甘く寄り添って
その後も変わらず私は毎日薫先生の原稿をインプットしていた。

「先生、今日の分は全て入力しました。追加はございますか?」

「ないわ。悠ちゃん、私のこと、どう思う、私って男っぽい?」

「先生はとても素敵な女性だと思います。書くことに一途で、ファンの方々も本を通して先生の魅力をつかんでいるように私も先生が大好きです。どうしてそんなことを聞くのですか?」

「私は離婚したことを後悔しているの。笑ってもいいのよ。私は彼に捨てられたのよ。見苦しくてもいいからあの時彼にすがって泣き叫べばよかったわ。このまま未練だけが残っているよりも彼の前で私の醜い全てをさらけ出せばよかった。今頃愚痴っても遅いけれど。」

「私には経験のないことなので何も言えません。」

「ごめんなさいね。悠ちゃんを巻き込んでしまって。」

「先生、お願いがあるのですが。」

「何かしら?」

「私を作家クラブの会合に連れて行ってもらえませんか?」

「クラブの?」

「はい。」

「一度も出席したことがないわね。そうね、顔を出してみようかしら。確か今月はxx日だったはずだわ。」

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