【短編】恋しちゃダメですかっ?
病院の自動ドアが開くと同時に、ふと気付いた。


小太郎に先生の名前を聞くのを忘れていた。

こんな大きな病院で、探せるだろうか?


小太郎に聞くしかないよね。


ことねは、神経を集中させる。


ゆっくりと耳の奥に響いてくる小太郎の優しい声を思いだす。


小太郎、お願い、でてきて!!


小太郎


今度は小太郎の名前をおもいっきり、心の中で叫んだ。

すると。


『呼んだ?どうしたの?』

「私、肝心な先生の名前聞くの忘れてたの。」


『ああ〜僕も忘れてた。
ここは病院だね、あの時の記憶が蘇ってくるよ。
先生の名前はね、鈴木三郎先生。
ベタな名前だろっ。』


「うん、たしかにベタで、おぼえやすい名前だね。」

ことねは、くすっと笑い、可愛く首をかしげた。


『あっ、いけない、また月の使者からの呼び出しだ。いかなきゃあ。
ことね、頼んだよ。』


せっかく可愛いポーズで決めてみたのに、もう行くんだ。


「うん、やってみるよ。
鈴木先生ね。」




もう小太郎のいる気配はすっかり、なくなっていた。


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