苦い鉛筆のようなチョコレート
もっと自分を大事にしなよ、なんて言ってくれる人はいないし。
その時がよければそれでいいって思っていた。
だけどそういう勢いだけの時ほど、後になってから闇の中に閉じ込められたような息苦しい感覚が襲い掛かってくる。

一史からのメールは、3か月ぶりだった。

体が冷えてきたので、携帯を閉まって少し早足で帰った。


玄関に着いて、タオルを頭から外す。
思ったよりも降っていて、タオルは何の意味もなさなかった。
髪も、服も、靴の中まで水浸しだ。

また、携帯が震えた。
今度は電話だった。

少しイラつきながら通話ボタンを押し、携帯を冷えた顔に当てた。
「もしもし?」
『あ、しゅうちゃん、メール読んだ?』
人の気も知らない、いつも通りのあどけない声。
嫌いなのに、少しだけほっとする自分もいる。
「…読んでない」
意味のない嘘で話題をそらそうと試みるけれど、意味がないものは意味がない。
私の言葉に力なんてない。

『久々にね、しゅうちゃんに会いたくなった』
「今さ、外、雨降ってんの。びしょ濡れで体冷えちゃって寒いんだよね」
『傘持ってなかったの?俺が温めに行ってあげるよ』
「3か月ぶりに連絡してきてそんなことしか言えないの?」
『しゅうちゃん怒ってる?』
「そんなん今さらじゃん。ほんと都合いいね」

悪態しかつけない私は女の子らしさが常に大幅に欠けている。
自覚しているけれど、壁を作らないとすべてが怖くなる。
いつも、必死で自分を守る盾にしていた。
それしか自分を守る術がなかったんだ。

でも、それは、本当に自分を守っていたの?
私はどうしたかったの?
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