【完】そろり、そろり、恋、そろり

明日が始まる前に side:T

彼女に誘惑されるままに、いつもより激しく抱いてしまった。もともと疲れていたらしい彼女は、限界だったのか行為が終わったと同時に、意識を手放した。今は俺の隣でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。


彼女が起きないのを確認して、シャワーを浴びるためそっとベッドを抜け出した。戻ってきたときもそのままで、隣に腰を降ろしても眠ったまま。少し動いたくらいでは、彼女は起きそうになかった。


生まれたままの姿で、横たわる彼女は、とても綺麗。乱れた髪も、スッピンの少し幼く見える顔も、何もかもが魅力的だ。


彼女に受け止めてもらったことで、ようやく俺の嫉妬心は落ち着いた。自分で処理できるくらい、もっと余裕のある男にならなきゃな。俺ばかりが彼女に頼っている気がしてしまう。


本当は男らしいところを見せたいけれど、なぜか彼女には人に見せない弱い部分とか、格好悪い部分ばかりを見せてしまう。


彼女の隣は、肩の力が抜けて、居心地がいいのは確かだ。





……俺も寝ようかな。ぐっすりと眠る彼女を見ていると、俺まで眠たくなってくる。今日は心労が絶えなかったからな。


彼女を起こさないように、静かに隣に横になり、額に1つキスを落とした。幸せそうに微笑んでくれた麻里さんに、幸福感に包まれるような、すごく満たされた気持ちになった。


「おやすみなさい」


囁くように呟いて、静かに瞼を閉じた。

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