【完】そろり、そろり、恋、そろり
どうやって彼女との距離を縮めていこうか、悶々と悩んだけれど答えは行方不明……というより、正しい答えなんて最初から存在しないかもしれない。ボーっと考えごとばかりしていたせいで、つい長風呂してしまい逆上せそうだった。危ない、危ない。こんな俺をみたら、池田と香坂にバカにされるな。もし麻里さんに知られたら、ドン引きされそうだ。


俺は見た目のせいなのか、チャラチャラしていて軽そうだと言われる。本当は認めたくないけれどロマンチスト(らしい)だし、人に騙されやすそうだと俺の事をよく知っている友人や家族からは言われる。それを隠すために、見た目通りを演じていたら、ライトな恋が大好きなタイプからモテるようになってしまった。


ある出来事がきっかけで職場では今までみたいに誘われることもガクンと減って、遊びたい放題ってことはなくなってしまったけど。


それに徐々に本当の俺が色んな人にばれてきて、いつも間にか同じ部署内では俺は弄られキャラで、落ち担当になってしまった。いくら見た目がまともだと言っても、いつも一緒の香坂、池田のほうが抜群に人気がある。だから、そんな俺には出会いもほとんどなくて、ぶっちゃけ恋愛経験っていう恋愛経験があんまりない。


「……どうすっかなー。明日相談するか」


無駄に広い、一人では寂しいダブルサイズのベッドに仰向けになり、天井を見つめながら呟いた。


そうだ、明日は来客がある。そのために買い物に出て彼女に会えたんだからな。俺が勝手に感謝しているだけが、彼ら夫婦相手なら話せそうな気がする。決して明確な答えを教えて欲しいわけではないけれど、とにかく誰かに話を聞いて欲しい。


ベッドサイドに置いている目覚ましをセットし、布団を着なおして眠る事にした。随分温かくなってきたとは言っても、昼夜の寒暖差は激しくて夜はまだまだ冷える。彼女……麻里さんも温かくして眠っているかな。あのビール、どれだけ飲んだんだろうな。こんな時間にデザートまで食べちゃったのかな。


やっぱり考えてしまうのは彼女の事。また彼女に会えますように。2人の出会いが運命でありますように。祈るようにして俺は瞼を閉じた。
< 24 / 119 >

この作品をシェア

pagetop