飴と道楽短編集
変な家【1P】
「えーっと203…ここか」


―ピンポーン―


『ガチャ、ハイ』


「あ、ピザラーです、ご注文お届けに参りました」


『ハーイちょっと待ってください〜、ガチャ』


インターホンが切られた瞬間、扉の横の窓が赤く煌めいた。


『フハハハやっと来たな我が注文の品が!!!』


「は!?」


煌々とした赤い窓の奥から響き渡った凄まじい低音。


『この時をどれほど待ち侘びた事か……さぁ時は満ちた!皆の者!思う存分喜びに浸るが良い!!』

『ゥキー!』
『キシャー!』
『シャシャー!』

「なっなんだこの家ショッカーとボスでもいるのか!?」

赤い光に投影される黒々とした大魔神のような影。

その回りを跳びはねる妙な人影達。


―ガチャ―


「ヒャ!!」

「どもご苦労様ですー」

「ぁ、あぁ!こっこちらお品物です!」


素早く手渡されるいつくかのピザラー箱。


「こっこちらお代が4250円になりまーす!」


「ハイハイ、あ、ちょっと待ってくださいお札が……」


と言いながら客は一度家に引っ込み必然的に閉まる扉。

そして再び光る窓。


『フハハハどうだこの芳しい香りは!!』

『ゥキー!』
『キシャー!』
『シャシャー!』

『まぁ待てそう急くな……焦らずとも奴に足などありはせぬ。逃げられる事もあるまい!!』


「な、何を言ってるんだこの家は」


―ガチャ―


「ヒェッ!!」


「すみません5000円でお願いします〜」


「あ、あぁ!ででは750円のお返しデス!!」


―チャリチャリチャリン―


「どうもー」


「あっざーしたぁー!!!」


帰り際窓を見ると赤い光も何もなく、ただごく普通のアパートの一室であった。


「……なに、ここ」




―end―

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