【完】時を超えて、君に会いに行く。
「彼方が他の人の心臓をもらって、そのことに罪悪感を感じる必要なんてないよ。彼方の両親は、ただ彼方に生きていて欲しかっただけ。
きっと誰も悪くない。仕方なかったんだよ」
「でも……」
「ねぇ、彼方」
未歩が俺の言葉を遮って、俺の名前を呼ぶ。
そっと、俺の胸から未歩の額の温度が離れていった。
気づけば未歩が、俺の顔を見上げている。
「未来でひとりぼっちだったあたしの小説を、見つけてくれてありがとう……」
泣きながら……彼女は笑った。
心臓がドキリと高鳴る。
ああ、そうだ……。この瞬間のためだった。
俺が生きる理由は、この瞬間のためにあったんだ。
もう十分。
……十分だよ。
俺は君に、たくさんの幸せをもらった。
「航とあれだけ気が合ったのは、血が繋がってたからなんだね。
それはちょっと、ビックリしたなぁ……」
「……俺も、それ知ったときは驚いた」
ふたりきりの時間がたまらなく愛しい。
このまま、時が止まればいいのに。
そんな風にさえ思ってしまう。
……本当は、この先もずっと一緒にいられると思ってたから。
……君と別れをするつもりなんて、なかったから。
……だけど俺は、もう……。