【完】時を超えて、君に会いに行く。
「……どんな過去だろうと、彼方が今こうやって生きてくれていることが本当に嬉しい」
「……っ」
ああ、もう。
俺なんかのために、なんでそんな優しいことを言ってくれるんだ。
愛おしすぎて、どうにかなりそうだ。
「未歩……。俺はそんなこと言ってもらえるような人間じゃないよ。こんな……他人の心臓を奪ってまで生きている俺なんて……」
「彼方の存在は、私にとってかけがえのないくらい大切なものだよ。だって、彼方はあたしを助けに来てくれた。困ってるときは、手を差し伸べてくれた。この優しい手は、人を汚したりしない」
「…………」
「いっぱい辛かったよね。苦しかったよね。寂しかったよね。
小さい頃、彼方が悲しいときに助けに行くことができなくて、ごめんね」
なにを言ってるんだ……この子は。
そんなこと、できるわけないのは当然なのに。
そもそも未歩が、俺の存在を知る術もないし、交わるなんてことはなかった。
ただ俺が、未歩に会いたくて勝手に時を超えて来ただけだ。