ORANGE SNOW
「ごく稀にこういう不思議な能力を持って生まれてくる子供がいる。
空を飛んだり、物を浮かしたり、魔法のように水を出したり。
それが私。
この傀儡はその中でも珍しくて世界で一つしかなかったんだって」

お父様が言ってた、と少女は少し悲しそうに言うと再び人形に紛れて踊りだした。
セルリアはその言葉で全てを悟る。

少女の痣は、やはり虐待によって出来た痣だと。

常人から見たら人形を操れり生み出す子供なんて気持ちが悪いだろう。
それ故けなされ、傷つけられ、閉じ込められた。
誰一人の目にも触れられないように。
こんな小さな少女が友達も作らず、ずっと人形とここで踊って。
自分がここから出れないとも知らずに。

「なんで泣いているの?」

「ごめ…っ」

自然にセルリアの目からは涙が溢れ出していた。
自分で自分にそれに驚き急いで拭うが、止まらなかった。
少女が首をかしげ、依然と変わらない表情にさらに心が締め付けられた。
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