ORANGE SNOW
時々少女が正気に戻ったように声を出すのは、きっと少女の中の魔力が無意識に抵抗しているからであろう。
それは余計体に負担を与えるのだが、その疲労を微塵も見せずにあれだけの魔法を繰り出す事ということは、とんでもない魔力を秘めていることになる。
リヴィアスは少女から静かに離れ、蓮華とさくらを振り返った。

「さくら、生きてる?」

「勝手に殺さないで・・・」

蓮華に半ばよりかかるようにしてたさくらが弱々しくもリヴィアスの声に反応し、体を起こしてにらめつけた。
すっかり傷は消えていたが痛みはあるらしく顔を歪めていたが、支障はないらしく、蓮華と共に立ち上がった。

「五線が消える前にその宝石をはずせっていうんでしょ。
まったくお人よしなんだから」

あんたの言いたい事なんてわかる、と言わんばかりにそう言い切ると、ふらふらと蓮華から離れて少女の近くに跪いた。
一瞬、自分の妹を襲った少女をこのまま殺してしまおうか、と考えたがすぐに首を振り手を宝石にあてた。
蓮華はそれをおろおろしながら見ていたが、すぐに自分のするべき事は五線を保つ事だと理解し、意識を集中させる。
それを見て、リヴィアスは頷いた。

「こいつは、あたしの昔の命の恩人なんだ。
助けてやってくれないか?」

「プリムロウズ、マスターの仰せのままに、ってね」

弱々しく微笑むと魔力を練り始める。
恥ずかしいからそれやめて、と言うリヴィアスにさくらは黙って、と言うと、蓮華をちらりと様子見、大丈夫、と確認すると静かに詠唱を始めた。



< 90 / 123 >

この作品をシェア

pagetop