first Valentine
フミは手の上に残されたチョコレートを再び半紙にくるむと巾着のなかへ優しく戻した。

まばゆい光の中、フミは真っ直ぐに墓石と向き合う。


「……想いを声に出して伝えるということは、とても勇気のいることです」

フミはそう口にした後、そのまま黙り込んでしまった。



どれだけそうしていただろうか。



彼女は瞳に強い決意を宿して目前に立つ墓を、いや、和夫を見つめる。



「初めてお会いしたあの日から、私はずっとあなたをお慕い申し上げておりました」


フミは静かに、はっきりとそう言った。

言い終えた後、ようやくフミの表情は緩み、笑顔が戻る。


「では、失礼致します」


フミは深々と一礼した後、くるりと振り返った。



一歩。一歩。
ゆっくりと歩みを進める。


陽の光はさらに輝きを増して、溶けゆく雪の下からは茶色の土が姿を現している。
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