不器用恋愛
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「啓吾くんは、一途だと思うけどな」
さっきも聞いたような言葉を、加地さんは軽やかにカクテルを作りながら言う。
「どこが、ですか」
あたしは疑問符もつけず、言い切る。
一途なんて、啓吾が使う事自体間違えてるんじゃないかと思う。少なくとも、あたしには理解できない。
マメだな、とは思うけど。出会って間もなく迎えたあたしの誕生日をここで知って、次に会う時ミニブーケをくれた。枯らすから勿体ない、なんて我ながら可愛くない事を言ったけど、啓吾は苦笑しただけで、次は一緒に祝ってやるよ、と言った天性のタラシだ。
大体、毎回、あいつと飲むと自然に女が寄ってくる。あのフェロモン体質どうにかならないのか。
何だか無性に悔しくなって
「あたしも男でも作るかなー…」
不意に自分の口から出たありきたりな言葉は意外だったけど、正直な所かもしれない。
友達がいない訳じゃない。だけど、いつも一人なんて、寂しいじゃない。まあ、作ろうかな、なんて言って簡単に出来る物じゃないけど。
「男!?ダメダメ!!」
いきなり会話に入ったのはテル。
「な、なんでよ」
まさか、あたしの事好き、なんて言い出すんじゃないでしょーね!?
「いや、それはあり得ないっす…ダメってゆーか、無理ですよ」
軽く否定してポンっとあたしの肩に手を置く。
あたしはあたしより綺麗な指先を思いっきりつねってやった。
失礼なガキ。