不器用恋愛


「蒼ちゃんと来る時以外はいつも通り一人だけど?」


加地さんはニッコリ笑う。


へぇ?女と一緒かと思ってたのに。大体、あたし、あいつのこと知らない。


自分の連絡先を慣れた手つきであたしの携帯にいれるプレイボーイ。
育ちの良い俺様にみえて、レールに乗らない野生児で、自分勝手な男だとおもうけど、言い換えればぶれない価値観、偏らない目線とか、強引だけどスマートな所とか、まあ纏めれば良い男だ。

あたしが知ってる事なんて、少ない。





出会ったのも、このバーで偶然。



そう、偶然。


このバーを見つけた時、秘密基地を見つけた様なそんな感覚で週に三回くらい通った。


いつもと違う曜日に、顔を出した日。


見るからにオーラの違う男に目を奪われたのは事実だけど、別にそれだけ。


それが、啓吾。



話しかけてきたのは、向こう。


「男らしい女ってあんた?」


失礼な男。初対面にも関わらず。あたしが眉を寄せた時、テルが慌てて補足した。


「啓吾さんが来る次の日に蒼さんが絶対来るんですよ。で、ふいに蒼さんが来た次の日は啓吾さんが来て、綺麗に順番になるんです。何も接点ないのに。だから面白いなって思って、話題に出たんです」


フォローになってないわよ、テル。その流れで男らしい女が出てくるなんてよっぽどじゃないの。


テルは罰が悪そうな顔をしたけど、啓吾が「面白いよな」と同意すると嬉しそうに顔を輝かせた。何故か頬を赤くして。

おまえのフェロモンは男にも有効なのか。



それが啓吾との出会い。


< 12 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop