恋愛しない結婚


「俺が今まで何年夢の側で振り回されてきたと思ってるの。あー、でも、奏さんのことなら俺からは何も言わない。大切なお客様だし、人の恋愛に首突っ込むほどヒマじゃない。気になるなら自分で聞けよ」

「……やっぱり。輝ならそう言うだろうと思った」

小さく息を吐いて笑う私を、同じように肩を揺らして笑う輝。

「でも、輝が私の恋愛を反対しないのって珍しいね。いつも私がつきあう男の悪い所を細かく挙げては反対してたのに」

「だって、夢には男を見る目がないし」

「え……そうかな。確かに自信はないんだけどさ」

私に恋人ができる度、相手の男を吟味しては反対してきた輝が、敢えて奏に関しては黙認してるっていうことが、輝の答えかもしれないけど。

それは、お客様として知っている奏を認めているって事なのかな。

昼間から気になっているいろんな事。

本命が他にいる?

プロポーズは本気?

どうして私を好きなの?

ぐるぐると。

悶々とした気持ちを抱えてやり過ごした午後は、どうしても奏に直接聞く勇気もなくて、打ち合わせが終わって解散となった後すぐ、奏を無視するように急いで自分の部署に戻ってしまった。

『夢』

背後からそう声をかけられたけど気付かない振りでエレベーターに飛び乗った。

きっと怒っただろうな。

葉山くんのファンから守ってくれて励ましてくれたのに。

どうしよう。

もう、私にがっかりして、結婚しようなんて気持ち、なくなったかな。

それよりも、最初からそんな気持ちは錯覚だったと気づいて、今頃すっきりしていたりして。

ふと、そんなマイナスだらけの感情が溢れてきて目の奥が熱くなった。

こぼれそうになる涙をどうにかこらえながら輝に視線を向けた。

「輝どうしよう……。嫌われたかも」

輝は、小さな声で呟く私を諭すように、「嫌われたかもしれないなら、謝ればいいだろ?夢が何をしでかしたかは知らないけど、まずそれからだろ」と言って私の頭を撫でてくれた。

きっと奏は気を悪くしてるはずだ。

今謝れば、間に合うんだろうか。

恋愛なんてこれが初めてじゃないのに、どうしてだろう、焦ってしまう。


< 22 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop