恋愛しない結婚
「俺が今まで何年夢の側で振り回されてきたと思ってるの。あー、でも、奏さんのことなら俺からは何も言わない。大切なお客様だし、人の恋愛に首突っ込むほどヒマじゃない。気になるなら自分で聞けよ」
「……やっぱり。輝ならそう言うだろうと思った」
小さく息を吐いて笑う私を、同じように肩を揺らして笑う輝。
「でも、輝が私の恋愛を反対しないのって珍しいね。いつも私がつきあう男の悪い所を細かく挙げては反対してたのに」
「だって、夢には男を見る目がないし」
「え……そうかな。確かに自信はないんだけどさ」
私に恋人ができる度、相手の男を吟味しては反対してきた輝が、敢えて奏に関しては黙認してるっていうことが、輝の答えかもしれないけど。
それは、お客様として知っている奏を認めているって事なのかな。
昼間から気になっているいろんな事。
本命が他にいる?
プロポーズは本気?
どうして私を好きなの?
ぐるぐると。
悶々とした気持ちを抱えてやり過ごした午後は、どうしても奏に直接聞く勇気もなくて、打ち合わせが終わって解散となった後すぐ、奏を無視するように急いで自分の部署に戻ってしまった。
『夢』
背後からそう声をかけられたけど気付かない振りでエレベーターに飛び乗った。
きっと怒っただろうな。
葉山くんのファンから守ってくれて励ましてくれたのに。
どうしよう。
もう、私にがっかりして、結婚しようなんて気持ち、なくなったかな。
それよりも、最初からそんな気持ちは錯覚だったと気づいて、今頃すっきりしていたりして。
ふと、そんなマイナスだらけの感情が溢れてきて目の奥が熱くなった。
こぼれそうになる涙をどうにかこらえながら輝に視線を向けた。
「輝どうしよう……。嫌われたかも」
輝は、小さな声で呟く私を諭すように、「嫌われたかもしれないなら、謝ればいいだろ?夢が何をしでかしたかは知らないけど、まずそれからだろ」と言って私の頭を撫でてくれた。
きっと奏は気を悪くしてるはずだ。
今謝れば、間に合うんだろうか。
恋愛なんてこれが初めてじゃないのに、どうしてだろう、焦ってしまう。