恋愛しない結婚



そう言って、輝の店を飛び出したはいいけれど。

奏が会社にいるのかどうかも、確認できていないまま、待っている。

毎日仕事で帰りは遅いって言ってたからまだ帰ってないよね。

時計は21時を指していて、かれこれ1時間くらい待っている。

それにしても大きなビルだなあ。

見上げた25階建てのビルは、奏が勤務している銀行の本店。

多くの窓にはまだ明かりがついている。

はあ。

ビルの正面玄関から少し離れたベンチに座ってどきどきと緊張感いっぱい。

慌てて輝の店を出て、奏に会いに行こうとしたけれど、奏の家も会社の場所も知らない事に気付いて愕然とした。

輝の店で会うか、私の会社で仕事の打ち合わせでしか顔を合わせたことがなかった。

私は本当に奏の事を知らなさ過ぎると改めて実感し、落ち込んだ。

ここ数日の展開があまりにも速すぎて、私の本心がどこにあるのかわからず、奏のプロポーズに振り回されていたけれど、奏の優しさや、私を庇ってくれる心地良さに触れて。

もっと奏の懐に入ってみたい。

本音を聞いてみたい。

ようやく、私の気持ちの奥深い所が奏へと向けられた。

今日の私の奏への態度の悪さを思い出すと胸が痛いけれど、今はとにかく会いたいという気持ちだけに素直になってここまできた。

照れくささをおしやり、会社に残っていた葉山くんに電話して聞いた奏の会社の場所。

既に帰ってるかもしれないけれど、祈るような気持ちで、奏が出てくるのを待っていた。



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