恋愛しない結婚
すると、私の背後に誰かが立ち止まった気配を感じた。
振り向くと、何故か葉山くんが立っていた。
「……まだ待ってるんですか?」
「え?なんで?なんで葉山くんがいるの?」
どう見ても不機嫌な顔で、急いで来たのか荒い息を隠そうともしていない。
「さっき電話で園田さんの会社はどこだって聞かれてから、やたらイライラして。会社も家もどこかはっきりとわからないくらいの男なら、もうやめたらどうです?」
「は?何言ってるの?」
「プロポーズされて、舞い上がってるだけでしょ?」
普段見ない葉山くんの強気な口調に圧倒されて、私は何も言えず、ただ見つめ返す。
「俺のほうがずっと……入社してからずっと見てきたのに」
葉山くんは苦しげにそう言うと、私の隣に腰掛けた…かと思う間もなく膝の上の手を握られた。
私が逃げないようにぎゅっと。
「葉山くん?」
揺れる事なく私を射る瞳からは、ふざけた思いは微塵も感じられない。
彼を単なる後輩としか見てなかった自分の今までの甘さに気付いて、微かに怖くなる。
「結婚したいなら、俺としたらいいでしょ。俺はずっと砂川さんを見てきたんだ。今更、突然現れた男になんか揺れるなよ」