恋愛しない結婚
「あの、奏……」
「ん……?」
「葉山くんは悪く……」
「悪いんだよ」
葉山くんは悪くないって言おうとしたのに、その言葉は瞬時に遮られた。
葉山くんも、その強い語気に驚いて目を見開いた。
「夢が好きなら、自分のテリトリーに抱えこんで守らなきゃいけなかったんだ。
仕事に集中したいっていうこいつの思いに気付いて、他の女の面倒な感情をどうにかしてやらなきゃならなかったんだ」
「……っ」
くっと口元をひきしめる葉山くんは、ほんの少し顔を歪めて……小さく息を吐いた。
何かをふっきったのか、その表情は少し柔らかくなっている。
「で、あなたならできるんですか?砂川さんを守って、仕事に集中させてあげられるんですか?」
力の抜けた、軽い口調はいつもの葉山くんだ。
普段と同じかわいい年下の後輩に見える。
「俺なら、とことん夢を甘やかして、えこひいきして可愛がって。会社で何を言われてもやっかまれても。俺から与えられる重苦しい愛情の方が大変だと笑い飛ばせるくらいにたっぷり愛してやる」
ふふん。
葉山くんに向けた不敵な笑顔に、葉山くんだけでなく私も呆然としてしまう。
「か、奏?あの、そこまで露骨に……あはっ」
奏では、自分の腕の中で照れる私をちらりと見ると、甘い声で呟いた。
「だから、安心して俺と結婚しろ」
どこまで格好いいんだ、この男は。
何だか悔しくて、嬉しくて。
輝のお店で止まったはずの涙が再び零れ落ちた。
すると、奏は私をその胸に抱きしめて。
「俺のだから、見るな。もったいない」
葉山くんに子供のようなことを言っていた。