恋愛しない結婚
奏の部屋は2LDKで、男性の部屋らしくあっさりとしていた。
けれど、家具も茶色で揃えられていて、どこか温かさがある。
「コーヒー入れるから座ってて」
そう言って、寝室らしき部屋に消えた奏を見送ると、やっぱり緊張してくる。
長い間恋人のいなかったせいで、男の人の部屋に二人きりって……うわ。
何年ぶりだろう。
仕事中心で過ごしてきた長い日々が、今の私を更に不安にさせる。
えっと、今日って、やっぱりこの部屋に泊まることになるのかな。
この流れじゃやっぱりそうなるんだろう。
もう子供じゃないし、経験がない訳じゃない。
お泊りの意味もわかるし嫌じゃないけど、やっぱり緊張する。
ソファに腰掛けて、妙にそわそわせずにいられなくて、意味なくテーブルの上の雑誌を手に取った途端。
雑誌の下から見えたのは、何だか見慣れた書類だった。
かなりの量の資料が積んである。
仕事関係なら、見ちゃいけないと思い、脇に寄せたけれど。
『砂川』
と検印された資料が目に入った。
思わず手に取ると、それは私が以前作った資料だった。