恋愛しない結婚


すると、奏は私の目を見ながら、何かを思い出すようにゆっくりと話し始めた。

「慣れてるっていえば慣れてるかな。この年だし、これまで深い恋愛をしなかった訳じゃないから。
まあ、今更そんな過去は消せないし、心から愛した女もいたからなぁ。だけど、今は夢しか見ていないし、他の女に興味はない。確かに夢より恋愛に慣れてる俺を、そのまま受け入れられない?っていうより、受け入れろ」

私の頬を撫でながら、少し不安げに囁く瞳は正直で、奏の言葉すべてが嘘じゃないんだとわかった。

今までの恋愛の深さが見え隠れする言葉が気になるけれど、奏が言うように受け入れるしかないのかな。

「最近は?好きな女の人とか、付き合ってた人はいないの?」

恐る恐る、一番気掛かりなことを尋ねると、奏はにんまりと笑い、嬉しそうに声をあげた。

「今は真っさら。夢を知ってからは、長い間夢を気にしながら過ごしてたから誰とも付き合ってない。
そう言うと、夢に必死なだけの情けない男みたいだな……でも、夢に近づくチャンスをずっと探してた。あの日、輝さんの店でしたプロポーズは、いきなりなんかじゃない、俺の中じゃ考えに考えた末の言葉だから」

「チャンスって、そんな」

私が何も気づかず酔っぱらっていた時間、それは奏が私を見てくれていた時間だ。

それにしても、酔っ払って愚痴って……きっと最悪な私を姿を見ていたんだろう。

輝に叱られたり泣くこともあったし、恥ずかしくて思い出したくもない。

それでも、そんな私を受け入れてくれた奏。

私を守って甘やかして、えこひいきして愛してくれる。

そう葉山くんに宣言した奏。


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