妖精と彼








俺は倉本 愛(くらもと あい)。
受験を控えた高校三年生。
女の子っぽい名前だけど、立派な男。





可愛らしい名前に対して、182センチの長身。
染めてはないけど、薄い茶色が地毛の短髪。





………名前以外に女の子っぽい要素はない。
もちろん心が女の子!なんてこともない。





俺には姉さんがいて、姉さんの名前は「悠(ゆう)」。
………名前が逆だったら良かったのに、と心底思う。





絶対に姉さんも、名簿の名前とかでは性別を間違えられているはずだ。






これだけが、俺のコンプレックス。
そして、もう一つ持て余していることがある。




それが、霊感があること。
俺の家族や家系に、霊感を持った人はいなかった。俺だけの能力だ。






俺はあまり霊が見えることは怖いとは思っていない。
生きている人間と同じで、恐ろしい霊も、優しい霊もいることを俺は知っているから。





だけどきっと、こういったものが見えない人からすれば怖いんだろう。
実際、俺の姉さんも幽霊に対して怖がっている。


その恐怖は、きっと未知なるものへの恐れだと俺は思う。






だけど、俺にとっては全てが目に見える存在だから。
霊だとか妖精だとか、人間だとか……そんなに特別な区分はない。












< 2 / 71 >

この作品をシェア

pagetop