嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
予定は急激に早まったが、エリカにはいずれプロポーズするつもりでいた。
二年も会わなかったのに、結婚したいと思う気持ちに変化はない。
あの日渡せなかった婚約指輪も、ちゃんと持ってきている。
最初ぽかんとしていたエリカの表情が、焦ったり怒ったり、ころころと変わっていく。
父親になるとまで言い出した俺に向けられた視線は、まるで氷のように冷たかった。
「か、勝手なこと言わないで…!この子は…っ」
「いいから黙って俺と結婚しろ」
つい命令口調になってしまった俺、言ってから激しく後悔した。
こんな風に上から言えば、エリカの反発が強くなることくらい分かってたはずなのに。
「嫌です。お断りします」
はっきりと拒否されるのは、想像以上にキツかった。
おまけに名前で呼ばれるのは嫌だと言われ、激しく気持ちが落ち込んでいく。
「仕事以外では、もう私に関わらないでください」
ダメ押しに近い言葉を吐かれて、エリカはさっさと俺のそばから離れていってしまう。
せめて送ってやりたいのに、いくら呼び止めてもエリカが俺の方を振り向くことはなかった。
その時エリカの肩ごしこちらをじっと見ていた寧々が、俺に向かって控えめに右手を振っていることに気がつく。
慌てて振り返すと、寧々は嬉しそうににっこりと微笑んでいた。
(か…可愛い…)
男はどうして、こうも単純な生き物なんだろう。
あの笑顔を、エリカと並んで見守り続けたい。
許されるなら、ずっと一番近い場所で。
「このまま…見逃せるわけないだろ」
小さくなっていく二人の姿を、俺は離れたところからそっと見つめる。
苦しげに溜息をついた俺の頭上では、たくさんの星々が夜道を照らすように瞬いていた。