嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

「別れ際に抱きしめたいならどうぞ、ご自由に」

返ってきた思わぬ言葉に、制御していたリミッターが外れてしまう。

一瞬真顔になった俺の表情は、次の瞬間口元だけに笑みを浮かべていた。

「…言ったな」

俺は目の前にあったエリカの身体を、ものすごい勢いで引き寄せた。

その瞬間細い肩が跳ね上がって、ああ、やっぱり勘違いしたんだなって心の中でニヤリと笑ってしまう。

…寧々じゃない。俺が今抱きしめたいのは、お前だけ。

それをエリカにわからせるように、背中に腕を回して思いきり抱きしめる。

二年ぶりの、愛しい柔らかさ。

抱きしめるだけで済ませるはずだったのに。

気がつけば片手は後頭部を押さえていて、目の前の唇に顔を近づけてしまった。

「……うっ…!」

その瞬間腹部に走った衝撃と痛みに、俺は顔を歪める。

暴走した俺は、ここで止められなければ、エリカの唇を奪ってしまっただろう。

…キスだけで済んだのかも、定かではないけど。

「…は…腹にグーはねぇだろ」

「黙れ!色魔!」

顔を真っ赤にしながら怒るエリカを見ていると、安心してしまう。

こんな風に確認しないで、本人に直接聞けばいい。

でも今の俺には、聞く資格すらない。

なぁエリカ。

俺以外の男に、その身体は指一本触れさせてないんだろ?

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