嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
もがくように目の前にある胸板を叩けば、翔太が怪訝そうに眉を寄せる。
そのもどかしいような表情は、まだ足りないと言わんばかりに私の方に向けられていた。
――こんな翔太を、私は知らない。
いつだって余裕で、私のことからかって、上から見下ろしていたのに。
目の前にいる男は、まるで道端に捨てられた犬のように、必死で私の身体に縋りついていた。
「も、……ほんと何?……何かあったの?」
運転席から身を乗り出す翔太のことを、私は必死で押し返す。
だけどやっぱり力では敵わなくて、背中に腕を回されたまま、ギュッと翔太の胸の中に押し込まれてしまった。
「……く、苦し……っ」
「不安だった」
辛うじて聞き取ることが出来た小さい声に、私ははっとして動きを止める。
翔太の口から出た“不安”という言葉の意味が、よくわからなかった。
「何言って……」
「今朝起きたら……お前が隣にいなくて。昨日のこと、全部夢かと思って……」
苦しげにそう呟いた翔太が、私の存在を確かめるように、背中を何度も優しく摩ってくる。
だから慌てて、仙台まで私を追いかけてきたの?
電話をいっぱいかけてきたのも、そのせいなの?
翔太は、どれだけ私のことを想ってくれていたんだろう。
とても二年間我慢していた人の行動とは思えない焦りっぷりに、なんだか思わず吹き出しそうになってしまった。