嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~
「夢じゃないから。とりあえず離れて?」
子供をあやすように、翔太に向かって優しく囁きかける。
不服そうな翔太の頬を指先で撫でれば、その口元がほんの少しだけ緩んだように見えた。
ああ……なんかもういいや。
美月には、明日散々冷やかされることにしよう。
「見られて興奮する趣味はないから。……早く出して?」
耳に唇を寄せて囁けば、翔太の瞳が衝撃に見開かれていく。
「……くそっ。エリカ、お前それわざとか」
「なんのこと?」
「マンションに帰ったら覚えてろよ」
舌打ちしながら車を発進させた翔太のことを、私はくすくす笑いながら見つめていた。
「……煙いんですけどー」
不貞腐れた翔太は、ベランダで一人タバコの紫煙を燻らせている。
窓を少しだけ開けて声を掛けた私は、独特の煙臭さに顔を顰めていた。
「お前さ、あそこまで拒否する事ないだろ。俺ら、結婚するんじゃなかったっけ?」
「玄関でいきなり襲ってくる方が悪いでしょ。私は着替えたかったし、お風呂も入りたかったの」
玄関を開けた瞬間、熱烈なキスで部屋に引きずり込まれた私は、翔太に襲われる寸前でその腕からやっとのことで抜け出した。
……その時ちょっと、思わぬところを蹴ってしまって。
いろんな意味で痛手を負った翔太は声をかけても反応せず、私が浴室から出てくるまでずっとベランダに閉じこもっていた。