隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話



可愛い娘は一生懸命働く。

「いくちゃんママ。おふろのおそうじとガラスふきがおわりました」

銀行からもらった貯金箱を手に
笑顔全開で私の元にやってくる。

「ごくろうさま」
お駄賃をチャリーンと貯金箱に入れると、桜ちゃんは小さな手でユサユサ揺らし、10円玉が増えてゆくのを確認。私の財布の10円玉が足りなくなってきた。隣のそば屋で両替させてもらおう。

貯金箱かかえてスキップする桜ちゃんの後姿をジッと見つめる私。

妖怪ウォッチ。

そんなに欲しいのか。

在庫が無いって
言った方がいいのかな。

テーブルの上に置いてある
妖怪ウォッチのマンガをパラパラめくる。

ひこにゃん


じゃなくて

しばにゃん……あれ、違う違う。

ジバニャン。

地縛霊の猫の妖怪なの?

あんたも苦労してんだね。

どうすりゃいいの?
ジバニャンよ。

「アイスコーヒーありましたっけ」

のん気に夫が二階から降りてきた。

「昨日作った。あのさぁ」
金魚のふんのように
台所へ行く夫の後ろを付いて行く私。

「郁美さんも飲む?」

「いらない。あの……例の物は在庫あるのかなぁ?」

上目使いに聞くと「え?……あぁ」って返事。

桜ちゃんの同級生のお母さんに聞いたら、お店でもいつ発売になるかわからなくて、発売日がわかっても夜中から並んでないとゲットできないと言ってた。
腹が立つのは
その並んでるのが妖怪ウォッチに興味のない大人で、ネット転売を目的に買っているという……ムカつくお話。






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