隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

ネットで見つけて買った方が早いかなって思うけど

どーなんだろ。

同じかな。

紀之さんはグラスに氷を入れ
アイスコーヒーを注ぎ
急に私の身体を抱き

「在庫はあるけど、いつまで使うの?まだ二人目は早い?」

耳元で甘く囁かれて
恥ずかしくて頭にカーッと血が上る。

何か勘違いしてません?

私は手元あったトレイで彼の頭を叩いて、その腕から離れた。

「そっちじゃなくて、妖怪ウォッチの話!」

このスケベ!

「あ、そっちがゴメンゴメン」

爽やかに笑っても冷たい目で見てしまう。

「そっちは……ダメですね。定価では買えない」

「オークションだけ?」

「そう」

あっさり返事されてガッカリくる。

「あんなに張り切ってるのに。どうすりゃいいんだろ」

桜ちゃんの笑顔が見たい。

お金が足りなくて
買えないってわかったら

私ならグレるだろう。

「郁美さんはどうしたい?」

私を試すように
彼は言う。

「私?」

「そう。15時間ぐらい外で並んで定価で買う?ネットで3倍以上のお金を払って買う?それとも桜にあきらめさせる?」

どれも嫌だけど

それしか道はないのかなぁ。
悩んで怖い顔をする私を彼は優しく笑う。

「正解は無いと思うんです。そこの家の価値観だから。並ぶなりネットで高く買うなり、あきらめさせるなり。そこの家の価値観だから口を挟んだり非難してはいけない。我が家はどうします?」

夏休みの宿題より難しい問題だ。


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