隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話
その後
桜ちゃんは
気づかう私に気づかい
無理な笑顔など見せながら
普通に過ごしてくれたけど
なんつーか
切ない。
夜中
まだ仕事を続ける彼の元へ行き
パジャマ姿で仕事中の彼の背中に抱きつく私。
「紀之さん」
「何?」
「私……へそくりあるから、高いけどネットオークションで買ってあげようかな」
甘えた声を出すと
彼はクールに
「郁美さんはそれでいいんですか?」って言う。
「じゃぁ夜中にお店の前で座り込んで並んでいい?」って今度は言うと、笑われた。
だって
桜ちゃんの
あんな悲しい顔
見たくないもん。
黙っていたら
自分の膝の上に私を座らせ
優しく包み込む。
紀之さんの香りがする。
「今、爆発的に売れてるから、発注してる最中だと思いますよ。なんだってそうでしょう。売れると思ったらすぐ製造を増やしてお店で売る。だからもう少し待てば必ず手に入ります」
そうだけどさ。
「それを知るのも勉強です」
そうだけどさ。
「それにね……」
彼はパソコンを開き
何やらマウスをクリックし
お気に入りを広げると
そこには
【手作り妖怪ウォッチ】のサイトが広がる。
手作りできるの?
あぁ
世の中には桜ちゃんみたいな子が沢山いるんだよね。
そして
私みたいな親も沢山いる。
よかった
仲間がいっぱい。
ひとりじゃない。
「明日、桜に見せて一緒に作ります」
「桜ちゃん喜ぶよ」
一気にテンションが上がってしまう。
桜ちゃんは工作大好きだもん。
ニコニコ笑顔が目に浮かぶ。
「ありがとう紀之さん」
ギュッと抱きつき彼の頬にキスをすると
「郁美さん」
「何?」
「達也君にプロレス技は禁止ですよ」
そこかい?
目を丸くすると
微笑んで甘いキスをする夫。
紀之さん。
大好き。