隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話


その後
桜ちゃんは

気づかう私に気づかい

無理な笑顔など見せながら
普通に過ごしてくれたけど


なんつーか

切ない。


夜中
まだ仕事を続ける彼の元へ行き
パジャマ姿で仕事中の彼の背中に抱きつく私。

「紀之さん」

「何?」

「私……へそくりあるから、高いけどネットオークションで買ってあげようかな」
甘えた声を出すと

彼はクールに
「郁美さんはそれでいいんですか?」って言う。

「じゃぁ夜中にお店の前で座り込んで並んでいい?」って今度は言うと、笑われた。

だって

桜ちゃんの
あんな悲しい顔
見たくないもん。

黙っていたら
自分の膝の上に私を座らせ
優しく包み込む。

紀之さんの香りがする。

「今、爆発的に売れてるから、発注してる最中だと思いますよ。なんだってそうでしょう。売れると思ったらすぐ製造を増やしてお店で売る。だからもう少し待てば必ず手に入ります」

そうだけどさ。

「それを知るのも勉強です」

そうだけどさ。

「それにね……」

彼はパソコンを開き
何やらマウスをクリックし
お気に入りを広げると

そこには

【手作り妖怪ウォッチ】のサイトが広がる。

手作りできるの?

あぁ
世の中には桜ちゃんみたいな子が沢山いるんだよね。

そして
私みたいな親も沢山いる。

よかった
仲間がいっぱい。
ひとりじゃない。

「明日、桜に見せて一緒に作ります」

「桜ちゃん喜ぶよ」

一気にテンションが上がってしまう。

桜ちゃんは工作大好きだもん。

ニコニコ笑顔が目に浮かぶ。

「ありがとう紀之さん」

ギュッと抱きつき彼の頬にキスをすると

「郁美さん」

「何?」

「達也君にプロレス技は禁止ですよ」

そこかい?
目を丸くすると
微笑んで甘いキスをする夫。

紀之さん。

大好き。
< 145 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop