隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

桜ちゃんが寝てから
私も彼にチョコを渡す。

「手作りじゃないけれど」

桜ちゃんの寝た後の居間は、とても静かで二人の時間がゆっくり流れる。

ワイングラスを重ね
バレンタインが無事終わった乾杯をする。

「ありがとう」
嬉しそうに受け取ってくれた。

有名ホテルのチョコレート。

「少し残しておいてね、桜ちゃんにも食べさせたい」

ソファで横並びになり
そんな会話をしてしまう。

やっぱり
中心は桜ちゃんにある我が家。

彼はうなずき
ひとつ自分の口に入れ
ひとつ私の口に入れる。

美味しい。
やっぱ高いのは違う。

「あちらのご両親喜んでた?」
そう聞くと

「あちらって?亡くなった妻の方のご両親はとっても喜んでました。来週、泊まる約束してましたよ」

「いや……そっちじゃなくて」
紀之さんと仲の悪いご実家の方だよ。

「え?普通でしたよ」
嫌な顔をする。

どんだけ自分の実家が嫌いなんだ。
頑固者め。

「喜んでたと思いますよ。孫からもらったら嬉しいでしょう」
そしてもうひとつチョコを食べる。

太るよ。
< 17 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop